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松下幸之助とM.エリクソンの意外な共通点

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約5分

昨日は都内に出かけていました。

東京スカイツリーのある
下町界隈での打ち合わせ…

とってもモダンなスカイツリーと、
下町を現代的に表現したソラマチという
場所の一角で打ち合わせしてました。

近代的な建物に対比して、
レトロな漢方の薬局があったり…

ここ墨田区は、昔(戦前?)
花王、ライオン、資生堂が石けんを
作っていたのだそう。。。

僕は習慣として、
毎朝書棚を眺めて、
気になった本をペラペラと
めくって流し読みするのですが、

昨日は松下幸之助さんでした。

『人生と仕事について
 知っておいてほしいこと』


という松下幸之助さんの
様々な場面での講話録です。

僕らがまだ子供の頃から、
日本を代表する企業家として
第一線で活躍されていた人の
言葉には、現代の僕たちにも
響くものがたくさんあります。

昨日、ぱっと開けたページは、
僕が生まれる前の言葉、
1962年の言葉でした。

その文章の一部を引用すると…

「誰にでも長所と短所がある。
 皆さんは、多くの人達の 
 長所を見ることに努力してほしい。」

「日本は上に上ろうとする人間を
 引っ張り下ろそうとする。
 私は国民性の弱点というものが
 あるように思うんです。」

スゴいですよね。

今から半世紀、50年も前の言葉です。

今僕たちはまだ、それをやっている。
そう感じながら、
この文章を読んでいるとき、
奇妙なデジャブを感じました。

「この言葉ってまさに…」

そうです、お国は違っても、
そして社長心理療法家
立場は違っても、いるんですね。
おんなじ考えを持つ人が…

松下幸之助さんの考えは、
ミルトン・エリクソン
同じだったのです。

幸之助さんは
短所より才能を伸ばす…

エリクソンは、
過去の問題よりも、
未来の可能性を…

多くの人間に伝えました。

ミルトン・エリクソンは…
僕の敬愛する心理療法家です。

その存在は『砂漠の魔術師』という
エリクソンの映画をご覧なられると
とてもよく分かります。

今でこそ、コーチングなど、
人の可能性にフォーカスした関わり方が
当たり前のように言われていますが、

1950年代に心の革命といわれる
『認知革命』が起こるまでは、
たったふたつの考え方以外は、
口にするだけで「異端」
言われていました。

その二つをざっくりと、
ちょっとだけ乱暴に整理すると、
人間とは、肉体と心理だけの生き物
捉えられていました。

ひとつの考え方は、
「心なんて存在しない!」
という考え方です。

「人間の自由意志は幻想である」を唱えた
BFスキナーに代表される行動主義です。

彼は人間を肉の塊と捉えていました。
人間の振る舞いの一切を、
外部から神経に入力された『刺激』
それに対する『応答』と捉えていました。

刺激-反応モデルと言います。

そこには、心の動きなど、外側から見えない、
観察できないもの一切を『ブラックボックス』
として排除し、人間は刺激反応の強化によって
作られるという考え方でした。

そして対極には、「精神分析」という
アプローチが存在します。

人間の活動すべてには、
無意識のプロセスが関与していて
振る舞いの選択は無意識によって
左右される
という仮説に基づいて
人間を捉える考え方です。

その代表者たるフロイトは、
人は意識する事すら苦痛な気持ち、
欲望などを「無意識」に抑圧することがあり、
それが「神経症」という症状を誘発すると
考えていました。

無意識は、「悪しきもの」
「隠しておきたい」否定的なエネルギーが
抑圧されて閉じ込められている場所として
意味づけされます。

フロイトは、抑圧の内容を性的衝動と捉え、
後に続くアドラーライヒといった人たちが
この考えをより洗練させていきました。

性的衝動…

劣等感…

精神分析家たちは、
さまざまな表現をしましたが、
基本的な考え方は、
否定的なエネルギーの保管庫という
捉え方をしていました。

そのエネルギーに無意識は
支配されている

だから、自分の意志とその衝動との葛藤
解消するためには、その内容を自覚し、
表面化させることが重要だと考えました。

それを精神分析家が関わることで、
解消するのだととらえました。

神経症になる人は無力で、
精神分析家がそれを助け、治す

そういう考え方だったのです。

ミルトン・エリクソンの考え方は、
そのどちらとも違いました。

無意識は経験の宝庫。

変化のためのあらゆる資源は、
無意識に眠っている、
まだ、適切な状態で使われないままで…

だから、変化のための
さまざまな機会を提供する

その多くが、自分にダメ出しをしている
意識を休ませて、無意識のリソースに
変化の原動力となってもらう。

そのために催眠という状態を、
クライアントと共に作り出す。

その催眠の中で、クライアントは、
自らを変化可能な存在と受け止め

無力な存在ではなく
意志と能力で変化を生み出すのです。

僕たちコーチがクライアントを
変化させるのではなく、
クライアント自らが変化を
起こすためのサポートをする
のです。

そのやり方の最も基本的なことが、
どんな否定的な振る舞いも
「能力」がそれを生み出す。

問題とは能力の使われ方と
使う文脈が適切でないだけ。

その考え方で他者と関わることが、
エリクソン流の変化
つまり成長なのです。

松下幸之助さんは、こう述べています。

「才能をどれだけ生かすことが
 できているか」という問題に、
 果たしてあなたの学びのどれだけが
 費やされたか…
 何冊のノートが、
 才能を生かすための学びに使われたか?
 私は費やされたとは思っていない。
 日本人はそういうことを
 研究しないといかん。」

そうおっしゃっています。

今日、あなたが出会う人に、
あなたが感じた相手の長所
伝えてみてはいかがでしょうか?

そしてその長所をもった存在である
その人に、どんな可能性があるのか、
それを楽しみにして、
関わってはいかがでしょうか?

では!

追伸:

ちなみに、行動主義の初期の提唱者、
ジョン・ワトソンは、行動を研究することは、

こころが科学的に研究できるレベル、
つまり観察可能になる技術が開発されるまでの、
暫定的な観察対象と捉えていたそうです。

そして今、科学の進歩で、
それが可能になった時代が来ていますね!

この記事を書いた人

神 崇仁
しぐさと言葉の専門家 神 崇仁(Takahito Ko)
意識の成長の壁を越えるお手伝い

JR西日本伊勢丹バイヤー、経営企画室でUxと経営を学ぶ
7&i 生活デザイン研究所 チーフディレクター(消費者心理の研究)
2007年からNLP探求を始める(NLPトレーナー)
『砂漠の魔術師』(エリクソンの映画)のアジアプロデューサー
世界的コーチS.ギリガン博士の米国アシスタント
IAGC(国際ジェネラティブチェンジ協会)の日本代表
ハーバード大学R.キーガン博士や
数々のエリクソンのお弟子さんの日本での講座開催を主導
これまで13年、4200時間、6500万円を探究に投資してきた
参加者は『講座づくりの神』と呼ぶ…
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