『コーチング4.0』レター 第4話

「答えがないなら答えを作る」心あるコーチたちのジレンマ


こんばんは 神 崇仁です。

前回は、
コーチングが「職業」として
成立するようになった流れ、

そして、
クライアントの内側から
答えを引き出すという
従来のスタイルだけでは
解決できない問題が
出てきた、

というところまで
お話ししました。

今日はその続きです。

解決できない問題とは、
例えばその人の内側に
意識的には答えが
見つからない場合です。

例えば
「売上を10倍にしたい」といった、
自分のこれまでの経験とは違う分野に
足を踏み入れようとした時というのは、

意識的には
(ここが重要なポイントですが)
その答えは本人の内側には
ありません。

それにもかかわらず、
「そこで何ができますか?」
「何をしますか?」と問いかけて

現在の売上1倍のレベルの中で
行動を考えさせたところで、
売上10倍という
ステージの違う場所には
全く届かないわけです。

別の言い方をすると、
「答えはその人にある」ではなく、
「答えをすぐに必要とする」
コーチングというのが
やってきたわけです。

そしてそれは、
独立する側にとっては
有利なことではありました。

多くの独立するコーチたちは、
それまでに自分の仕事、
つまり専門性を持っていました。

ある専門分野で
何らかの結果や成果、
ノウハウを自分が発見したか、
誰かから得たかは別として、

困っている人に対して、
あるいは自分がかつて経験して
乗り越えてきたことが
誰かの役に立つ、
ということになったわけです。

つまり、売上を10倍にした人は
「売上を10倍にするやり方」を持ち、

そういうニーズを持った人に対して
提供できる解決策を
コーチ自身が持つ、
という提供の仕方に
変わってきたわけです。

なぜなら、
コーチング 2.0 の
美しく、かつ決定的な欠点は、
時間がそれなりにかかることでした。

クライアントを傾聴し、内省を促し、
その人自身でが答えを導くという
カール・ロジャーズや
非指示的療法の影響を
強く受けていたからです。

『今すぐ』

『正解を』

というニーズとは真反対。

このニーズに応える最適解は

答えを支援者である
こちら側が持っていて、
その答えを教えるプロセスを
コーチングで行う。

つまり、
コンサルティングとコーチングのやり方が
融合してきたわけです。
これを「コーチング 3.0」と言います。

コンサルティングというのは、
ある特定の専門分野において
問題解決の答えを持っている
(コンサルタント)ということです。

そしてコーチングというのは、
その人の内側にある潜在能力を最大化して、
パフォーマンスや結果を出していくための
関わり方をすることです。

クライアントにGROWを
言語化してもらいながら

”O”の何をどのようにするか?
という解決策を提供する

「コーチング×コンサルティング」の
やり方が、
コーチングの市場を席巻します。
『ハーバード・ビジネス・レビュー』でも、
「コーチングはもう入れ食い状態だ」
と伝えるような特集が
組まれたりしました。

実際この期間、
コーチングの最も大きな団体の
参加人数が5倍に増えるという、
驚くべき発展を遂げています。

さらには、この市場に向けて
コーチ2.0の出身者だけでなく、
コンサルタントも
こぞって参戦するようになります。

そこには
マーケティングを専門にする
コンサルタントも参加していきます。

コンサルティング×コーチング。

これがビジネスの問題解決に
とどまっている間は、
素晴らしい成果が出ていました。

ところがです…

コーチングとは
逆の側の専門家たちは、
リサーチしている相手に
あることに気づきました。

マーケティング上、
巨大な手付かずの
黄金エリアがまだある。

それは、
『心の悩み』でした。

人間関係…

自分自身との関係…

2000年代に入って
悩める人がどんどん増え、
そこには、
従来の心理療法では
カバーできない『病気未満』
という巨大な市場があった。

だから
「コーチングは心を扱わない」と
決めたはずなのに、
なんと心を扱うコーチたちが
現れます。

これが
いわゆるコーチング3.0、
コンサルティングの発展形です。

それは何か。

僕たちの周りにも
いるんじゃないでしょうか。

自己重要感コーチ、
恋愛コーチ、
夫婦関係コーチ、
人間関係コーチ。

こういった自分の心を扱う
コーチングが、
3.0 の派生形として
現れたわけです。

でも実のところ、
これらのテーマは、
残念ながらコーチングで
扱えるものじゃありません。

というのも
コーチング3.0のスキルは、
GROWモデル
現在・ゴール・その間を埋める選択肢。

そしてコンサルティングは、
解決の方程式。

人間関係に正解はなく、
自分との関係にも

万人に当てはまる
正しいやり方なんてない。

なぜならコーチ2.0があえて避けた
感情という厄介な存在が関わるからです。

GROWモデルと処方箋で
解決できるものではない、
感情が絡む極めて個別性の高いものだったんです。

それをコーチングの
GROW モデルで扱おうとしたら、
当然困難が生じます。

だから何をしたか?

最初から答えありき、
どこが悪いかを診断し、

どの答えに落とし込むかが
最初から決まっている

誘導方式のコーチング、

つまり「診断処方方式」が
定番となってきたわけです。

診断形式…
つまりこういう主訴ならこの問題

処方形式…
だったらこの解決

という問題→解決
を誰でも扱えるマニュアルにした。

これは使い手側には都合が良いこと。

ですが、

個別の悩みを抱えた人には、
その瞬間は良くなったけど、
結局変わらない…

という結果を招くことに。

それは
巡り巡ってコーチの側の
「役に立ててない…」

という否定的な実感に
つながることになります。

そして今、一周回って
コーチは感情を扱うところに
戻ってきたのです。

神 崇仁(こう たかひと)/このページはメールでお届けした文章です。